日本の通信キャリアが死んでもiPhoneを導入できない理由

Appleが満を辞してiPodを発表した。
相変わらず、Jobsのプレゼンは段取りから発表まで見事としか言いようがない。
ドコモの903i発表のときのプレゼンとはえらい違いだ。


1.iPhoneの紹介

デザインとインターフェイス
 iPhoneインターフェイスは、僕が思い描いている理想のケータイに近いモノがある。全面タッチパネルで背面はiPodのような金属の仕上げではない白いカバーで覆われている。



見た目のインパクトに目を奪われる。

今までのケータイ端末も、今年の端末でも国内のメーカーはおそらく出さないであろう。凄まじい機能の数々。
なんか凄い。こりゃ売れる。年間1000万台を目指すと言うだけのことはある。


日本国内のキャリアも採用すれば、間違いなく他キャリアからの契約数奪取を図ることが出来ること請け合いで採用しない手はない。
しかし日本国内のキャリアは多分採用しないと思われる。


iPhoneの本当の脅威】
iPodの時に本当に怖かったのはiTunes
iPhoneで本当に怖いのはWidgetだと思われる。

 そして一番大きそうなフィーチャーはウィジェットへの対応である。MacWindows VistaといったOS、Yahoo!GoogleWindows Liveなどでウィジェット、ガジェットとして普及しつつあるウェブミニアプリ。これがiPhoneの中で動くのだ。日本そのほかのケータイでもJavaなどでアプリケーション開発が可能だが、それこそMacと同じウィジェットiPhoneで持ち出すことも出来る。ただ最新情報を同期するにはオンラインであることが常に必要だが、iPhoneはケータイなのだ。問題ない。

要はPCのデスクトップに常時アプリケーションを貼り付けられる機能。
パソコンだとこんな感じ。



ケータイに応用するとすれば待ち受け画面にネットからダウンロードしたアプリを自由に貼り付けられると言うことを示す。
これが日本国内キャリアの今後のビジネス展望を壊滅的な状況に追いやる。


【聖域への侵入】
ケータイにとって、ある機能に到達するために押さなければならないボタン回数は、その機能の生命線である。
ドコモのケータイサービスのiチャネルが最近元気が良いらしい。
黙っていても、待ち受け画面にニュースがテロップ表示されていく。

ボタンは一回も押さなくて良い。究極の0ステップがうけいれられた理由だろう。
(+最新のニュースを抑えた気分になるユーザニーズ 
 +煩雑な機能の羅列からサービスを探すのにウンザリしたユーザ)


これを受けて、auもEZニュースフラッシュを投入している。ドコモは他にもきせかえツールやらマチキャラやら0ステップを前提にしたサービスを出しており、待ち受け画面の聖域をうまく利用したサービスを今後も積極的に投入する可能性が高い。


最近のコミュニケーションサービスでの最大ヒットはデコメールだがパケホーダイに入られたら収益にならない。プッシュトークもテレビ電話もパッとしていない。継続的なキャリアとしては通話料・パケット収入の減少は避けられず、使える情報サービスか第3のリアル連携サービス(お財布ケータイみたいな)で一刻も早く収益を担保するか、低コストのインフラ屋に変貌するか選択を迫られる。(固定のFLET'S光を見ていると、動画サービスとインフラでバランスよく利益を出しているようだが・・・)


前者で収益を担保することを本気で考えると待ち受け画面の0ステップ聖域を明け渡すことなど絶対できないだろう。(現にiアプリは待ち受け画面の描画のAPIがいつまで経っても出て来ない。)
その点でウィジェットは破壊的だ。OS Xで既に提供されているようなアプリがすぐに使える。(お天気予報アプリ、RSSリーダーアプリ(iチャネルと競合)、株価表示サービス、英日翻訳)今よりも豊富なアプリ群が自由に0ステップで使えるようになる。その後もGoogleなどWeb2.0系サービスが提供しているWebサービスと連動したアプリが怒涛のように出現し続ける。なにせ誰でも開発できる。情報は無料で再利用できる形で公開されている世の中である。モバイル向けに作られた使いやすいインターフェイスウィジェットが生き残り、サービスの競争が今とは比べ物にならない加速する。下手をすると家にいるときは無線LAN接続でYouTubeすら見られるようになるかもしれない。


iPhoneだけ特別扱いで、他のメーカの端末だけ今までどおりやれば良いという意見もあるかもしれない。しかし、iPhoneの販売力を考えると現実的ではない。おそらく圧倒的な販売シェアですぐにキャリアの収益を食い始めることは必至だ。なにせ予定通りなら最初から年間1000万台売ろうというのだから。パワーがありすぎる。今の国内メーカでもHTCなど法人向けの端末には自由にやらせている場合が多いが、コンシューマでその自由を開放することは致命的だ。


【通信キャリアは急速な変化を求められる】
販売すれば確実にキャリアの収益を食うことは必至。強みである音声サービスの通話品質だけではサービスの収益を確保するのは難しい。からと言って他のキャリアが採用すれば、お客が逃げる。とてつもなく難しい状況になる。
iPhoneの採用可否は通信キャリアのビジネスモデルの行く末を左右する難しい製品だと考えられる。からといって、国内総出で採用を見送れば、後々もっと酷いことになる。モバイルサービスで世界から取り残されてしまう可能性が高い。
お財布ケータイなどのリアル連携サービスを収益化してリアル志向としてケータイを独自発展させる+iPhoneの良い部分を取り入れる(もちろん待ち受け画面はオープンにはしない。)という路線もアリだが、電子マネーは競合揃いで望みは薄くなっているし、また世界から孤立した独自文化を歩むことになる。
うーん、なんとかうまく共存できないか?


【出るとしても骨抜きiPhone
例えばパケホーダイは対象外だろう。ウィジェットは非対応、あるいは制限付き。ソフトバンクのような見た目重視の会社ならば、その上で出す可能性はある。が、制限のつきかたによってはAppleがNoと言うだろう。


Appleはモバイルに関わる全ての参加者に重大な課題を突きつけたことになると思う。
キャリアがiPhoneを採用するのはとても大変。